日本の補聴器の満足度が低い理由とその対策①

日本の補聴器の満足度は、残念ながら海外の主要国と比較して低い傾向にあります。

日本と海外の補聴器満足度比較

日本の補聴器満足度:

  • 低い水準: 過去の調査では30~40%台と報告されていましたが、近年では改善傾向が見られ、50%程度という調査結果もあります(JapanTrak 2022)。
  • 改善傾向: 2018年の調査と比較すると、満足度は上昇しています。特に認定補聴器技能者によるフィッティングを受けた場合の満足度が高いことが示されています。
  • 課題: それでもなお、海外主要国と比較すると低い水準にとどまっています。

海外の補聴器満足度:

  • 高い水準: 欧米の主要国では、補聴器の満足度は70~80%程度と報告されています。
  • 例: イギリス、ドイツ、フランスなどで高い満足度が得られています。中国ではさらに高い満足度を示す調査結果もあります。

日本と海外の満足度に差が出る理由

  • 装用開始年齢: 視力低下と異なり、聞こえの悪さを年齢のせいだと考え放置されがちです。補聴器の装用開始が遅れるほど、効果を実感しにくくなります。海外では比較的早期(50~60代)から補聴器の使用を始めるのに対し、日本では高齢になってから(70~80代)始める人が多い傾向があります。早期装用の方が、補聴器の効果を実感しやすく、満足度も高くなる可能性があります(※装用が遅い場合、認知機能の低下、言葉の理解度の低下、音の聞き分けの困難、音の速さについていけない等の問題が起こる可能性が高くなります)。
  • 専門家による調整: 海外では、聴覚ケアの専門家(オージオロジストなど)が適切なフィッティングや調整を行うことが一般的です。日本でも認定補聴器技能者の重要性は認識され、そのフィッティングを受けた場合の満足度は高いものの、まだ十分とは言えません。専門家の不足や質のばらつきも課題です。補聴器は購入後の調整が非常に重要ですが、十分な検査や調整が行われないまま販売されるケースがあり、個々の聞こえの状態やニーズに合わせた細やかな調整不足が、装用感や聞こえの質の不満につながっています。
  • 補聴器に対するイメージ: 海外では補聴器に対するネガティブなイメージが比較的少ないのに対し、日本では「目立つ」「わずらわしい」といったイメージが根強く残っている可能性があります。
  • 情報不足: 補聴器に関する正しい情報や、購入・調整に関する知識が十分に普及していません。早期装用を促す仕組みも不足しており、海外に比べて、早期の補聴器装用を推奨する医療機関や専門家が少ない傾向があります。
  • 公的補助の充実度: 欧州各国などでは、補聴器購入費用の公的補助が充実している場合があり、経済的な負担が軽減されることが満足度につながっていると考えられます。日本の公的補助は限定的です(※日本の公的補助制度は、欧州各国と比較して対象となる条件がかなり厳しく、補助額も限定的であり手続きも煩雑であるという現状があります)。
  • 聞こえのリハビリテーション: 海外では、補聴器装用後のリハビリテーションが重視される傾向がありますが、日本ではまだ十分に行われていない場合があります。
  • 販売方法: 日本では通信販売など、十分な調整や相談なしに補聴器を購入するケースがあり、不適合による不満につながる可能性があります。海外では対面販売が主流で、購入後のサポートも重視される傾向があります。

まとめ

このように、日本と海外では補聴器を取り巻く環境や意識に違いがあり、それが満足度の差につながっていると考えられます。近年、日本では認定補聴器技能者の役割が見直され、満足度も向上傾向にありますが、海外のレベルにはまだ及ばないのが現状です。

②に続く

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