「声は聞こえているのに、何を言っているのか分からない。」
「テレビの音量を上げても、肝心の内容が頭に入ってこない。」
「何度も聞き返すのが嫌で、会話に入るのを諦めてしまう。」
もしあなたがこうしたお悩みを抱えているなら、それは単に「耳が遠い」のではなく、「音を言葉として理解する脳の力」が弱り始めているサインかもしれません。
一般的な健康診断や病院で行う聴力検査は、「どれくらい小さな音まで聞こえるか(聴力)」を調べる、いわば“音のボリュームの限界チェック”です。
しかし、私たちが日常の会話を楽しむために本当に必要なのは、「聞こえた音を、瞬時に“言葉”として処理する力」です。
これを「聴能(ちょうのう)」と呼びます。
この記事では、まず「聴力」と「聴能」の違いを分かりやすく整理しながら、あなたの会話のストレスの本当の原因がどこにあるのかを探っていきます。
「聞こえる」と「分かる」は違う? 聴力と聴能の壁
1-1.健康診断の聴力測定で分かること(音のボリューム)
病院や健診で測定する「聴力」とは、あなたがどのくらい小さな音まで聞き取れるか、つまり「音の大きさの限界(ボリュームの下限)」を測る検査です。
耳の“マイク”としての機能を見るイメージです。
この検査で「軽度難聴」と言われても、
・家族の声は聞こえているのに
・何を言っているのかだけは分からない
という悩みを抱える方は非常に多くいらっしゃいます。
これは、音の大きさだけが、あなたの会話のストレスの原因ではないからです。

1-2.補聴器専門店ライトヒアリングが重視する「言葉の理解力」= 聴能
私たちが本当に知っておくべきなのは、「聴能(ちょうのう)」という力です。
・聴力…音のボリューム(dB)をどこまで拾えるか
・聴能…聞こえた音を、どれだけ正しく“言葉として聞き分けられているか”
聴能を調べる検査が、「語音明瞭度測定」と呼ばれる、言葉の聞き取りテストです。
「き」「し」「ち」などの単語を聞いて、どれくらい正確に聞き取れているかをパーセントで評価します。
いくら音を大きくしても、脳がその音を「言葉」として処理する力が弱っていると、ただ「うるさい音」に感じるだけで、内容は頭に入ってきません。
つまり、「聞こえる」と「分かる」は、まったく別の問題なのです。
この違いを踏まえたうえで、次のページでは「なぜ聞こえにくさを放置すると、脳がサボり始めてしまうのか」についてお話しします。
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